TRIVIA スパイス百科
アフリカン・ブラックペッパー GRAINS OF PARADISE
胡椒の向こう側にある、もう一段階複雑な刺激
西アフリカ原産のショウガ科植物の種子で、胡椒のような刺激に柑橘やジンジャーを思わせる明るい香りが重なります。中世ヨーロッパでは高級スパイスとして取引され、「楽園の穀物」と呼ばれていました。肉料理や煮込み、ソーセージのほか、近年ではクラフトジンのボタニカルとしても再評価されています。体を内側から温める感覚があり、ブラックペッパーよりも複雑で柔らかな辛味が、料理や飲み物に奥行きを与えます。
ブラックペッパーとは植物学的に別種です。
ブラックレモン(ドライライム) BLACK LEMON / DRIED LIME
酸味に“影”を落とす、中東生まれの柑橘スパイス
ライムを丸ごと乾燥させた中東原産のスパイスで、酸味・苦味・ほのかな燻香が重なった独特の風味を持ちます。保存性を高める知恵から生まれ、ペルシャ湾岸地域の家庭料理に深く根付いてきました。シチューや豆料理、魚料理に加えると、爽やかさだけでなく陰影のある味わいが生まれます。柑橘でありながら「香辛料」として機能する、料理の印象を一段深くする素材です。
種は苦味が強いため、必要に応じて取り除きます。使い過ぎると渋味が前に出ます。
ジュニパーベリー JUNIPER BERRY
料理に森の空気をまとわせる、静かな香り
ヨーロッパから西アジアに自生するヒノキ科の常緑低木の果実で、松や柑橘を思わせる清涼感のある香りが特徴です。古代から薬用や浄化の象徴として扱われ、蒸留酒ジンの香り付けに欠かせない存在として知られています。肉やジビエの臭みを抑え、煮込み料理に奥行きのある風味を加えるほか、砕いて使うことで香りが立体的に広がります。少量で空気感まで変える、存在感のあるスパイスです。
生食には適さず、必ず加熱や香り付け用途で使用されます。
アジョワン AJWAIN
料理の輪郭を一瞬で引き締める、強い香りのスイッチ
中南米原産のベニノキの種子から得られるスパイスで、穏やかな香味と鮮やかな橙赤色が特徴です。香り自体は控えめですが、料理に自然な温かみのある色合いを与えるため、先住民の時代から食用や染料として使われてきました。現在でもメキシコやカリブ料理、チーズやバターの着色など幅広く利用され、油に移して使うことで色味が美しく引き出されます。味を主張せず、料理全体の印象を支える「背景のスパイス」として長く親しまれてきました。
主に色付け目的で使われ、辛味はありません。
スターアニス STAR ANISE
中国料理の代表的なフレーバー
スターアニスはシキミ科のトウシキミの果実を乾燥させたものです。種子を包んでいる果袋が8個ほど星型に配列されており、乾燥すると硬く木質化し八つの角を持った星型になるので八角とも呼ばれます。特有の甘い香りはアネトールという精油でフェンネル(茴香)やアニスも同じ精油成分を持っています。日本には近縁種のシキミが自生しており、スターアニスとよく似た果実をつけますが、シキミにはアニサチンという猛毒の成分が含有されており、飲食すると非常に危険です。
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マスタードシード MUSTARD SEED
辛味だけでなく、コク、うま味も強めるスパイス
マスタードは、アブラナ科のカラシナの種子で種皮の色によってイエロー種、オリエンタル種、ブラウン種などに分けられます。イエロー種は刺激的な辛味が弱く穏やかな辛味でコク、うま味が強いのが特徴です。オリエンタル種、ブラウン種はともに鼻に抜ける刺激的な辛味があります。マスタードの辛味は水を加えることで酵素が活性化し辛味に変わるので、水を加え攪拌し10分程放置し辛味を引きだしてから使います。
日本にはカラシナとして中国から伝わり平安時代の書物に記録されており、今日でもカラシナは漬け物の原料として多くの変種が各地で栽培され利用されています。
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ペッパー(胡椒) PEPPER
最も親しまれているスパイスの王様
胡椒の果実をそのまま乾燥させた黒胡椒は、ドライフルーツのように濃厚で刺激的な風味と辛味があります。果皮を除去して乾燥させた白胡椒はマイルドな刺激に発酵臭が加わった辛味があります。どちらもピペリンという辛味成分に由来します。緑色の果皮の色を特殊な乾燥方法で残したグリーンペッパーは、黒胡椒よりシャープで若々しい風味と口当たりがあります。
ピンクペッパーはペッパーという名が付いていますが、コショウとは別の植物でウルシ科のコショウボクの果実です。赤桃色が美しく見た目を楽しませてくれます。
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フェンネルシード FENNEL SEED
植物全体を利用できる優れもの
フェンネルは、スターアニスやアニスと同様の芳香成分アネトールを主成分とし、ほんのりと甘く清涼感のある香りが特徴の植物です。地中海沿岸が原産で、古代エジプトやローマでは薬用として栽培されていました。シード*は香辛料として用い、葉はハーブや野菜として利用するなど、植物全体を利用できる優れものです。繁殖力が強く、丈夫で栽培も容易なので世界中に広がり、日本へは平安時代中期に中国より伝わってきました。和名は「茴香(ういきょう)」といい、一説では、悪くなった醤油にフェンネルのような良い香りのものを入れると香りが回復する=「回香」が語源と言われています。
*スパイスとしてはシード(種子)ですが、植物学上では果実の部分にあたります
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フェヌグリークシード FENUGREEK SEED
使いこなし技術の必要な上級者向けスパイス
フェヌグリークという名前は、ラテン語の「ギリシャの枯草、ギリシャに野生する牧草」に由来します。インド、中近東、地中海沿岸にかけて古代より使われてきました。
種子や全草を乾燥させてスパイスとして、そのまま野菜として使用します。乾燥した葉はインドではカスリメティと呼ばれ、サブジ(インド風野菜の炒め煮)やカレーなどに使われます。
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パプリカ/スモークパプリカ PAPRIKA/SMOKED PAPRIKA
奥深い色味と独特の甘苦い香味をもつスパイス
パプリカは唐辛子の一種、辛味のない甘唐辛子の仲間です。大航海時代にコロンブスによってヨーロッパにもたらされた唐辛子がスペインからハンガリーへと伝えられた後、16世紀に品種改良され、ハンガリーの特産品である現在のパプリカが生まれました。
パプリカは、1937年にノーベル賞を受賞したハンガリーの博士の研究結果をきっかけに注目されるようなりました。博士は、パプリカの果肉に柑橘類よりも多量にビタミンCが含まれていることを発見しました。これにより、人々の関心を呼び、急速に消費量が増加したと言われています。
パプリカには多くの品種が存在していますが、成熟したときに鮮やかに赤く色付き、乾燥しやすい果肉の品種を乾燥させた粉末をスパイスとして利用しています。鮮やかな赤橙色~赤色の粉末で、辛さはほとんどないもの、全くないものがあります。
スモークパプリカは、パプリカを樫(かし)の木のチップでスモークして粉末にしたもので、パプリカパウダーと同様に使えます。
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ナツメグ/メース NUTMEG/MACE
広く世界で用いられる、4大スパイスのひとつ
ナツメグは、広く世界で用いられているスパイスとしてこしょう、シナモン、クローブとともに4大スパイスと呼ばれています。
ナツメグの木は、インドネシアのモルッカ島などで生息する熱帯性の常緑樹です。堅く多肉質のあんずに似た黄色い果実をつけます。中にある種子がナツメグ、種子を覆っているレース状の仮種皮がメースです。ナツメグとメースは香りも味も似ていますが、ナツメグの方がより刺激的な香りが強く、メースの方が上品な味わいがあります。
ナツメグはホールとパウダーのものがありますが、日本ではパウダーのものが一般的です。ホールはおろし金ですりおろして粉末にしてから使います。
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ターメリック TURMERIC
インド料理には欠かせない色付けのスパイス
日本では漢方の「ウコン(鬱金)」の名でよく知られているスパイスです。「ウコン」は、ショウガ科ウコン属の植物の通称で、春ウコンや秋ウコンが相当します。ターメリックは晩夏~秋に白い花を咲かせる「秋ウコン」です。同じショウガ科のショウガやガランガルのような形をした根茎を乾燥させ、粉末にしたものがスパイスとして市販されています。
18世紀頃には、東洋から西洋に輸出され、「インドのサフラン」と呼ばれ、高価なサフランの代わりの色付けとして使われるようになりました。日本でも、たくあん、辛子(マスタード)の着色に古くから使われています。世界各国で料理の香味・色付けだけでなく、綿・絹・羊毛・皮革等の染色にも用いられています。また、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」では、美白効果や、肌トラブルを解消する効果があるとされ、肌にターメリックを塗り込むパックなどに使われています。
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シナモン / カシア CINNAMMON / CASSIA
お菓子にはもちろん、料理との相性も抜群
シナモンはクスノキ科の常緑樹で、いくつかの近縁種をシナモンと称しています。上品な香りが特徴のセイロンシナモンや、力強い香りが特徴のカシアがその代表です。スパイスとして利用されるのは樹皮の部分で、薄くはいだ樹皮を幾層か丸めてスティック状にしたものと、樹皮を粉末にしたものがあります。
シナモンは最も古いスパイスのひとつで、古代エジプトでは、ミイラを保存するための主要な薬剤としてシナモンが使われました。聖書にもシナモンを示す記述があります。
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コリアンダーシード CORIANDER
パクチーブームで一躍ポピュラーにカレーの主要スパイスのひとつ
地中海が原産のセリ科の植物で、エスニック料理の人気とともに、近年日本でも定着し始めました。香菜(シャンサイ)やパクチーの名前でピンとくる方も多いことでしょう。
リーフとシードの両方を料理に使いますが、風味はそれぞれ異なります。リーフは、カメムシのような臭気と評されることもありますが、好きな人はやみつきになる独特の芳香です。シードはリーフの強烈な香味とは一変して、レモンのような爽やかな香りと甘い香りを併せ持った、すっきりとした風味です。
虫のような味と表現されることも多いコリアンダーですが、その名前も主に由来しています。コリアンダーの語源は、ギリシャ語のKoris(コリス)。ローマの学者がナンキンムシの臭気と葉の香りがとても似ているとして、コリアンダムと名付けたのが始まりです。
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クローブ CLOVES
強い風味があり、少しの量でも効果的
クローブはインドネシア原産の熱帯性常緑樹で、花のつぼみを乾燥させたものが香辛料になります。クローブという名前は、形そのものがクギに似ていることから、フランス語でクギという意味の「Clou(クルウ)」が由来とされています。また、香りがとても強いため、ほんの少量の使用で効果的なスパイスです。強い香りは百里離れていても届くという意味で「百里香」とも呼ばれています。
クローブは殺菌力が強く、古代から生薬として使われてきました。6世紀頃にはすでに日本へももたらされ、正倉院にも宝物として納められています。西洋ではオレンジにクローブを刺したポマンダーを、虫よけや芳香剤として使用していました。
インドネシアでは「クレテック」というインドネシア特有の煙草にクローブが利用されています。そのため、インドネシアは世界でも有数のクローブ消費国です。